日帰りの恋
 思わずじっと見上げると、彼は微妙に視線を外した。
 少し、いやかなり不自然な空気を漂わせている。

「もちろん、その……上司として」
「あ……」

 誤解を恐れるかのような、付け足しだった。

 ――上司として


 ドライブに誘われてから今日までずっと、私はドキドキしていた。
 それが今は、ズキズキに変わっている。

 私の心境をわかっているのかいないのか、神田さんはやけに明るい口調で言った。

「なっ、真山。俺もたくさん買うつもりでいるから、一緒にグッズ集めを楽しもう」
「……はい」

 首を垂れるように私は頷く。
 彼の楽しそうな笑顔を見ていられない。

 どういうつもりなのか、全部わかってしまった。
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