日帰りの恋
 神田さんは、パーキングエリアとサービスエリアで買い物をするつもりなのだ。
 往復ドライブの道中で、ご当地グッズを、車内が賑やかになるほどたくさん。

 それはつまり、仕事の延長だ。トモロウでは、ご当地グッズの企画も多く手がけている。これはリサーチを兼ねたドライブなのだ。

 部下を連れて、細かく休憩しながらリサーチする。
 上司として。

 ――真山は以前、ご当地グッズを集めていると言ったね。

 だから私をドライブに誘った。
 これは仕事。やっぱり、彼にとって仕事だったのだ……

 ワンピースの柔らかな布地を、ぎゅっと握る。
 でも、すぐに離した。
 ここで固まってどうするの。考え方一つじゃない。

 憧れの上司とドライブできるんだもん。ラッキーだと思えばいい。

「はい、では遠慮なく!」

 顔を上げて、明るく笑った。眩しい5月の空に、暗い顔なんて見せちゃいけない。

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