日帰りの恋
 ドライブに誘われた時、嘘だと思った。ぎりぎりになるまで信じられなかった。

 信じられなくて当たり前。
 だって、デートじゃなかったから。

(ワンピースなんか着ちゃって、バカみたい)


 ご当地キャラクターの小さな縫いぐるみを選んだ私に、彼は「女の子だなあ」と目を細めた。
 7歳年上の神田さんにとって、私はまだまだ"女の子"なのだ。

「俺はもう少し見ていくよ」
「それじゃ、外で待ってますね」

 私が店を出てからも、熱心に買い物を続ける彼。
 建物の前で所在無く待ちながら、雲ひとつない空を見上げた。

 爽やかすぎる5月の空に、江口さんの遠くを見る目が重なった。

 ――仕事のことしか考えてない野暮な男。

 きっと誰に対してもそうなのだ。私だって例外ではない。


「ぜ~んぜん、つまんない!」


 すべての想いを吹っ切って、日帰りドライブを楽しもうと決めた。
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