日帰りの恋
「それにしても、キャラクターグッズに詳しいのはさすがですね。私も見習わなくちゃ」

 せんべいを食べ終えると、私は話を続けた。さっきと同じように、尊敬の眼差しを神田さんに向ける。

「まあ、これが俺の本分だから……君のほうこそ入社して一年しか経ってないのに、下手なベテラン社員より詳しいじゃないか」

反対に褒めてくれるから、私は恐縮する。

「コレクションも相当な数だろう?」
「そうですね……物心つく頃には集めてましたから。だから、古いのだと20年ものでしょうか」
「20年ものか。たとえばどんなグッズ?」
「ええと、一番古いのは戸部山動物園で買ってもらった、とべぞう君っていう、人気者の象をデザインした縫いぐるみです。自分は2、3歳だったのでよく覚えてないんですが、母が言うには、店先で駄々をこねて欲しがったそうで」

 ちょっぴり恥ずかしいけど、正直に告白した。
 だけど神田さんは笑わず、真顔で聞いている。なぜならその縫いぐるみもトモロウの商品だったのだ。

 私は高校生の頃にそのことに気がつき、トモロウを意識するきっかけとなった。

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