日帰りの恋
「そろそろ昼にしようか。腹が減った」

 古瀬木インターを降りたのは正午を回った頃。私もお腹が空いていたので、神田さんの提案に賛成した。
 
「真山は何が食べたい?」
「そうですねえ。せっかくだから、土地の名物とか食べてみたいです」

 私が答えると、神田さんは嬉しそうに頷いた。

「古瀬木名物といえば、地鶏の天ぷらラーメンは絶品だぞ」
「そうなんですか?」

 神田さんはETCのゲートを抜けると、分岐を迷うことなく左に進み一般道を走り出す。
 ナビに頼らず進路選択する彼に、私はちょっと驚く。

 山や畑が広がるのどかな景色を眺めていると、彼はじきに脇道へと入った。車一台通るのがやっとのような、細い道路である。いや、道路というよりこれはあぜ道だ。

「わ、わっ。危ないですよ、神田さん!」

 路肩にタイヤが半分かかっているだけの状態なのに、スピードを緩めない。
 思わず声を上げる私だが、神田さんは涼しい顔。

「平気平気。慣れてるから」
「えっ?」



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