日帰りの恋

「こんにちは、はじめまして。あの、私は神田主任の部下で……」
「そっかー。どうもはじめまして、妙子さん。俺は英ちゃんの同級生で、遠山久治（とおやま きゅうじ）って言います。よろしくねー！」

　皆まで聞かず、彼は自己紹介した。きれいに並ぶ白い歯は健康的で、笑顔には素朴な明るさがあった。

「は、はい。よろしくお願いします」

　遠山さんの言葉から、私はようやく理解することができた。
　そうか、この人は神田さんの同級生。
　そして、ここは彼の故郷なのだ。

（なるほど。だから、ナビを見なくてもすいすい走れたんだ。こんなに危なっかしい道に『慣れてる』のは、地元の人だから……）

　でも、そうならそうと、なぜ言ってくれなかったのだろう。

　疑問の目を向けるが、神田さんはこちらを見ようとしない。その代わり、キューちゃんと呼ばれた彼が興味津々の表情で、私を見つめている。

　そして、彼は納得したかのように深く頷くと、こう言ったのだ。

「なるほど、お前好みの可愛い子だあ。ついに結婚、決めたんだなあ！」