日帰りの恋
(うう……美味しい)

 衣の歯ざわりも、じゅわっと口中に広がる肉汁も絶品だ。
 思ったとおり麺は適度な歯ごたえがあり、天ぷらの香ばしさが溶けたスープと絡んで、絶妙のハーモニーを奏でている。

 グルメリポーターのごとき感想を心でつぶやきつつ、一心にラーメンを食べた。
 そんな私を眺めていた神田さんも、やがて箸を取った。


 ――ついに結婚、決めたんだなあ!

 遠山さんの、わくわくした口調が耳に蘇る。

 私は地元名物のラーメンを頬張るうちに冷静になってきた。
 神田さんの幼なじみ。走り慣れたあぜ道。
 ここは、彼の故郷なのだ。

 信じられないけれど、もしかしたらひょっとして、そういうことなのかもしれない。
 でも、やっぱりあり得ない。だって私は、あなたに比べたら、まだ全然子どもなんですから。


 スープもきれいに飲み干し、名物地鶏の天ぷらラーメンを平らげた私。
 神田さんは先に食べ終え、待っていた。
 そして、観念した様子で答えたのだ。

「俺は、君を誘おうと決めていた。もう、一年も前から」
「……」
「ひと目惚れだった」

 私はぽろりと、箸を落とした。

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