日帰りの恋
Tomorrow
 神田さんは呆然とする私をしばらく見守っていたが、無言のまま立ち上がるとレジに向かった。
 私はよろけながら、あとをついて行く。身体の芯が、ふにゃふにゃになっていた。

 信じられない告白。
 でも、この人は冗談でそんなことは言わない。新入社員として一年間、彼に面倒を見てもらった私は、よく分かっている。

 一年間――

 君を誘おうと決めていた。
 もう、一年も前から。
 ひと目惚れだった。
 
(まさか、本当に……本気で?)

「真山」
「はっ、はいっ!」

 店を出て車の前まで来ると、私達は互いを見合った。

 私は今、みっともないくらい赤面しているだろう。
 神田さんも心持ち赤くなってるけど、さすがオトナの男は落ち着いたもの。俯きそうな私に、冷静な声をかけた。

「もう少しだけ、ドライブに付き合ってくれないか」
「……え」

 声とは裏腹な、熱い視線に囚われる。

 初めて会った日、私は神田さんにひと目惚れした。ずっとずっと憧れてきた。
 それなのに、彼のほうがこんなにも熱っぽい眼差しをしていたなんて、まったく知らずにいた。

「きちんと話すよ。この一年、俺がどんな想いで君を見ていたのか」

 神田さんは男で、私は女。
 ここにいる二人はもう、上司と部下ではなかった。
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