日帰りの恋
「え? あの、ちょっと待っ……」

 つんのめるようにして彼の胸に飛び込んだ。いや、これはもう、飛び込まざるを得ない強引さだ。
 身体で感じる彼の熱量に、私は混乱する。

「やっぱりそうだったのか、やっぱり。ああ良かった。ありがとう真山!」

 神田さんは私を胸に抱き、いつまでも離さなかった。
 私もじっとしたまま、喜びを噛みしめている。

 出会った瞬間に彼が描いたプランは、日帰りの旅。
 目的地に到達し、そして帰って行く。でも、それで終わるわけじゃない。二人は出発点に立ち戻り、恋を始めるのだ。

 彼の鼓動を聴きながら、なぜか、そんなイメージが胸に湧くのだった。


 神社を出たあとも、周辺を案内された。

 明るい空、爽やかな風。
 私の目には、これまでとは違う町に映った。

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