日帰りの恋
「入社式もパンツスーツだったし……女子力が低下してる?」

 ちなみにヘアスタイルもショートで、化粧も必要最低限。
 女らしいとは言えない。

 男の子と最後にデートしたのはいつだったろうと考えつつ、「デート」という単語に自分でびっくりした。

「私、神田主任とデートするの?」

 ここへきて思いきり混乱する。
 今更の"実感"だった。

 でも、どうしても"嘘"だと思う自分がいる。
 神田さんとデートだなんて何かの間違いだ。そんなの、あり得ない。


 だけど、私は必死だった。
 ああでもないこうでもないと迷った挙句、一番大人っぽく女らしいと思われる洋服を選んだ。

 シルクコットンの膝丈ワンピ。

 さらりとした肌触りが気に入って衝動買いした一枚だけど、吊るしっぱなしになっていた。
 胸元の開きが広すぎて、着るのに抵抗があったのだ。

「でも、これしか手持ちがないし」

 オトナの女性はスカートでなければいけない。
 私なりのこだわりだった。

 ニットカーディガンを合わせて、なんとか落ち着いた。
 見えそうで見えない胸の谷間がこれで隠れる。

 大人っぽいのはいいけれど、セクシーなのは似合わないと自覚していた。
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