日帰りの恋
 ベッドに入ってからも、なかなか眠れない。目を開けたまま、夢を見ているような感覚だ。

 神田さんは朝の8時にアパートまで迎えにくると言った。
 ちゃんと起きられるだろうか。

「……そういえば」

 ふと、約束した時のことを思い出す。
 彼は同じ職場の人であり、アパートの住所をご存知なのは不思議ではない。だけど……

『壁色はベージュで、4階建だったね』

 と、建物の外観を言い当てたのはなぜだろう。飲みの帰りに送ってもらったという記憶もないし、どうして分かるの?

(ひょっとして、誰かから聞いたのかな)

 チームの仲間とは密な関係であり、同僚の住まいの話題が出るのも珍しくない。

「……」

 疑問の答えに大した意味はなさそうだ。深く考えないことにする。



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