くちづけ~年上店長の甘い誘惑~
突然のように藤岡さんにキスされたのに、私はそれを当たり前のように彼の唇を受け入れた。

ずっと前からそうだったかのように、ただ受け入れた。

嫌悪感も感じなければ、藤岡さんに抵抗しようとも思わなかった。

「――まさか、本当にどこかで会ったことがあるって言う訳じゃないよね…?」

でも、私と藤岡さんは一体どこで会ったと言うのだろうか?

頭の中の古い記憶を探して見るけれど、そこに彼の姿はいない。

何で見つからないの?

藤岡さんは私のことを知っているのに、私は藤岡さんのことを何も知らない。

どこかで彼と会ったことがあるはずなのに、何も思い出すことができない。

「――本当に、何なのよ…?」

そう呟いた私の声は誰にも聞かれることなく、その場から消えて行った。
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