夢の言葉と陽だまりの天使(上)【夢の言葉続編②】

「……。」

僕はゆっくりと鞄の内ポケットに手を突っ込んで、指輪を返そうと探った。

…捨てようと思った、あの時。
アカリの悲しそうな表情が頭に焼き付いて、離れなかった…。
僕が、泣かせてしまった。


「……アカリを。
ずっと笑顔にしてやって、くれますか?」

「…おう!
当たり前じゃん。約束する。」

迷いのない真っ直ぐな瞳のギルさん。
彼に、アカリの笑顔を託す事にした。

指輪を取り出して、
ギルさんに差し出そうとした。


その時…!

「ワンワンワンッ…!!」

「!?っ…うわッ…!!」

突然、背後から散歩していた犬に吠えられた。
幼い頃に犬に噛まれた僕は犬が大の苦手で…。
すっかり動揺した僕は、
手の力が緩んで…指輪を放してしまった。

僕の手から離れた指輪は…。

ポチャーンッ…!

……。
………。

橋の下の水の中に、落ちた。
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