夢の言葉と陽だまりの天使(上)【夢の言葉続編②】

「そんなあやつが初めて自分の欲しい物を手に入れた。
”休みがほしい”、”自分の時間がほしい”、”家へ帰りたい”…。
……そう、望む様になった。
仕事しかなかったヴァロンが変わったんじゃ。
アカリさんの元に帰りたい、とな…。」

マスターさんは話してくれた。
以前は仕事が終わるとヴァロンはいつも何処か寂しそうな表情を浮かべていた事。
なかなか自宅へは帰ろうとせず、シュウさんの仕事部屋に居座っていた事。

それが私と暮らす様になってから、
笑顔で隠れ家から自宅へ帰って行く事。


「…ありがとう、アカリさん。
お主のお陰で、ヴァロンはようやくこの家を好きになれたんじゃな。」

マスターさんが姿勢を正して、ただ黙って話を聞いていた私に頭を下げた。

”ありがとう”…。
まさかの言葉に驚いて…。
その優しい言葉に私は涙を流す事しか出来なかった。
< 189 / 355 >

この作品をシェア

pagetop