夢の言葉と陽だまりの天使(上)【夢の言葉続編②】

「……面白い。
お手並み拝見だ、ヴァロン。
……。
いや、契約期間中は……。」

アランは薄い笑みを浮かべたまま俺をジロジロと眺めるよう様に見つめ、視線を止めた。

そして…。


「……猫(mao)。
お前は今日からマオだ。」

奴がそう言った視線の先にあるのは俺のネクタイピン。
最後のデートの時にアカリがくれた、猫を象った銀色のネクタイピンだ。


マオ。
異国の言葉で猫と言う意味。
不思議とその心地良い名前に違和感を感じなかった。

…マオ。
俺は、マオ。
心の中で呟くと、
俺の中で…夢の配達人のスイッチが入る。


「……かしこまりました。
では、本日よりこのマオ。
貴方様に心より努めさせて頂きます。」

片手を胸に当て、アラン様に深く頭を下げた。


依頼人の夢を叶える。
さぁ、俺のマオとしての時間の始まりだ。


……
………。
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