プルシアンブルー“俺が守る”
「爽築。」


「ごめん、ここなら誰にも聞かれないだろうと思って。」



異動の準備や譲琉の公判の件で忙しく、署内の人間には一通りの挨拶を済ませたものの、喝宥とはゆっくり話が出来ていなかった為、署から近い小さい橋の下へ呼び出した。


車通りは多いが人通りは少ない、河川敷に並んで座る。



「ありがとう助けてくれて。後、勘を馬鹿にしてごめん。」


「いや、別に。つーか、捕まっるとかドジっちまったの俺だし。実際に助けたのはハルだし。」



捕まらなければ、爽築は殺されそうにならなくて済んだし、譲琉も罪を重ねなくて済んだのに。



「ううん。譲琉は小さい頃から『姉ちゃんは俺が守る』が口癖だった。父に虐待されていた私を守ろうとして、あの時ついに。」



普段から爽築をいじめる父親に反抗的だった譲琉は、ある時父親が爽築へ性的な虐待を加えているのを目撃してしまい、衝動的に突き飛ばしてしまった。


その結果、キャビネットの端に頭を打ち付け父親は死亡した。



爽築も譲琉も、母親さえ何も言わなかった為、転倒による事故死扱いになっている。


中学二年の時転校したのは、生活能力の無い母親が親戚を頼る為だった。
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