TUBASA ~つばさ~
駅へと向かう帰り道。
陽は完全に落ちていた。
静かな住宅街に人影はまったくない。
「正宗さんどうだった?」
歩きながら訊いてみた。
「えー、あの人変!」
やっぱり。
「堅いって言うかさ、冗談も通じないし。話しもつまんない」
「光さんが、凛子とお似合いって言ってたよ」
「冗談やめてよー、マジ無理だから」
「まあまあのイケメンだけどね」
「イケメンでも無理なものは無理」
車が私たちの横を過ぎる。
ライトに照らされて、影が伸びる。
「光さんはルナにご執心だったけど?」
「うーん、いい人だとは思うけど、謎が多くてよくわかんないかな」
「謎?」
「そ、色々ね。あの大きなお屋敷に一人で住んでるとか、両親はニューヨークとか」
へー、と凛子はうなずく。
「正宗さんが時々泊まりに来るらしいよ」
「もしかして、ゲイ?」
凛子の言葉に吹き出してしまった。
「あはは、ちょっとヤダー。でもそうかもよ」
「あの二人、マジ仲いいよね」
「うん、いっつも一緒にいるよね」