TUBASA ~つばさ~
「私は璃子さんにはなれません」
「....はは、そうだね」
自嘲気味に光さんは笑う。
「璃子は僕のすべてだった......」
静かに光さんは語りはじめた。
「....僕が高1の時だった、璃子に出会って。すぐに恋に落ちたんだ。お互い深く愛し合っていた。なのに.....」
光さんはため息をついて天を仰ぐ。
涙をこらえてるようだった。
「その年、クリスマスの前だった。璃子は転校したんだ。そして、僕を残して遠いところへ行ってしまった。二度と逢えない遠くへ」
『遠いところ』
言葉の意味するところが、分かった気がした。
光さんは視線をあわさない。
「どうして璃子さんは転校したんですか?」
「璃子の家は旧家だったんだ。璃子は生まれた時から許婚がいたんだ」
「いいなずけ?!今どき?明治時代じゃあるまいし」
「......僕らにはわからないしきたりや伝統があったんだね」
ポツリ光さんは言う。