TUBASA ~つばさ~

体育の時間に社交ダンスの授業があった。


その時は、みんなバカバカしいって嫌がってたけと、
こんな所で役に立つなんて思いもしなかった。


斗馬は優しく私の手をとり、もう一方の手を腰に回す。


見つめあいながら静かにステップを踏む。


幸せなひととき。



「隆太が真子に告るらしいよ」

耳元で斗馬がささやいた。


「え、そうなの」


「ああ、この雰囲気ならうまくいくだろ」


「そうだね」


中世の舞踏会とはいかないけど、薄暗く怪しい雰囲気は気分を高揚させる。



後夜祭は告白の場でもあった。

お祭りが終わる寂しさと焦燥感から告白する生徒が多いのだろう。

後夜祭がきっかけでつきあいだす生徒が多いのはそのためだ。






あっ.....




斗馬に抱きしめられていた。



「......斗....馬」




突然のことにドギマギしちゃう。



「誰も人のことなんて見てないよ」


耳元の囁き。


「暗いから、俺たちだってわかりゃしないさ」



全身が熱くなるのがわかる。



ああ.....、斗馬......。



時が止まってしまえばいいのに。

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