辛 恋
「すまない、心。
騙すつもりは、なかった。
話しを聞いてくれるか
場所を変えて。」
と、進藤さんは言った。
私は、コクンと頷いた。
私達は、各々シャワーを使い
身支度をしてから
ホテルを後にした。
『進藤さんの荷物は、
キチンと準備しておきます』
と、支配人は言った。
私は、進藤さんの車に乗り
マンションに帰るのだと
思っていた。
だが、
進藤さんは、何も語らずに
車を走らせて・・・
着いた所は‥‥海だった。
進藤さんは、車を降りて
私が、そばに来るのを待ってから
砂浜を歩いた。
進藤さんは······
お父さんの話し。
お母さんの話し。
お父さんの愛人だった佳奈さんの話し。
お母さんは、精神的に追い詰められて
入院している話し。
お父さんと佳奈さんが
勝手に進藤さんと佳奈さんの
婚姻届けを出していたこと。
籍は、入っても
一度も抱いたことはなく
一緒に生活したこともない
と、話してくれた。
私は、話しを聞きながら
涙が止まらなかった。
進藤さんは、
そっと、私の涙を拭いてくれて
「心は、優しいな。」
と、言って
「心、俺は、お前を愛してしまった。
だから、このままでは行けないと
佳奈に籍を抜いて欲しいと
話し合っているが
一向に話が進まないから
弁護士を間にいれたんだ。
だが、あいつ、のらりくらりと
交わしやがって
まあ、裁判になっても
俺の方が有利だが。」
と、言ったが
「心。
俺の身が綺麗になるまで
もう、お前とは合わない。
お前を俺の事に巻き込みたくないし
心のおばあさんや弟に
心配かけたくないから。
もし、もしも、俺がきれいになる前に
お前に好きな人ができたら
迷わず、そっちに行け。」
と、言った。
それから、進藤さんは、
私を家まで送り届けて
帰って行った。