辛 恋

進藤さんの手紙を良さんから
渡されて二年が過ぎた。

私は、ASUKA建設を辞めて
退職金と貯金で、今は生活をしている。

今日は、ゆきさんの所に
きている。
ゆきさんは、ゆきさんの大好きな
テラスにいて車椅子から
おりて、テラスの椅子に腰かけている。

膝元には、小さな男の子が
電車のおもちゃで遊んでいた。

「遙(はるか)は、おばあちゃまが
好きだね。」
と、言うと
「うん、ちゅき
マーマも、ちゅき。」
と、言うから
「ありがとう、ママも遥が大好き。」
と、言うと
ニコニコしている。
ゆきさんもそんな遥の頭を撫でていた。

私達は、夕方までいて
家に帰った。

施設の人からも
「心さんと遥君が、来ると
すごく嬉しそうにしていて
毎日、待っているみたい。」
だと、言ってもらえた。

それもあって、
ゆきさんの施設に近いとこに
引っ越してきた。

そう。
私は、あの手紙を貰った時には
妊娠をしていた。

あれから、体調が悪くなり
病院に行くと
妊娠していることがわかった。
8ヶ月までは、会社で働いてから
退職した。

亜也さんや知佳には、心配かけたり
迷惑かけたりしながら・・・

壬は、かなり怒ったが
「なら、この子と一緒に死ぬから。」
と、言うと渋々納得してくれた。

おばあちゃまは、
私の事を一番に考えてくれて、
私の思うようにさせてくれた。
このマンションもおばあちゃまが
買ってくれた。

良さんには、話してない。
大翔さんには、知られたくないから。

壬は、たまに知佳と一緒にきてくれて、
遥と遊んでくれた。

パパとは、冷戦状態。
ママは、遥の出産の時に
日本にきてくれて、
ゆきさんにも会ってくれた。
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