あと一欠片のピース
▽
「…う、まぶしい……」
朝日が眩しくて、目が覚めた。
「……あれ」
頬に違和感を感じて触れてみれば、手に水がついて、止めどなく流れていることに気がついた。
わたし、どうしたんだっけ。
ここ、わたしの部屋、だよね…?
どうやって帰ってきたんだっけ。
ベッドまでどうやって来たんだっけ。
昨日の記憶が曖昧だ。
その代わりに今まで1年間なかった知識として「青木真尋」が頭の中に存在していた。
真尋の存在に気がつくと、目から湧き出る水の量が増えたような気がした。
「…ぁ、うぅ、くっ……」
口からこぼれ落ちる泣き声が、誰のものかわからなかった。
「今宵、これ使って」
スッと星が散らばったハンカチが目の前に伸びて来て、やっと自分が泣いていることに気がついた。
「っえ、茜?」
「おはよー」
「おは……待ってなんでここにいんの?」
「あ、不法進入じゃないよ? 今宵ママの許可得てるからね」
「そういうことじゃなくて!」
ゴシゴシとハンカチで涙を拭って、アホ発言をする茜を睨むと茜は眉を下げて笑った。