あと一欠片のピース





そりゃあ、そうだ。


茜にはわかりっこない。


わたしにだって、わかりっこない。



「今宵のこと名前で呼ぶやつって、どれくらいいるっけ?」


「女子は殆ど。男子は誰もいない」


「違う、男子は誰もいなくはない」


「え、誰?」


「今宵の幼なじみ」


「……あーあいつか」




あいつ、というのはさっき影王子と一緒につるんでいると話した光王子、のことである。



「そう、あいつ。東海道線」


「うん、茜、わざとだね。違うよ。海堂 千(かいどう せん)ね」



東海道線あらため、海堂千はわたしの幼なじみである。


まあ、幼なじみといっても小学校が同じでそれからずっと学校が被ってきていて、ちょっと家が近くて親同士が仲が良い、それだけ。


ちなみに、茜とは中学から一緒だから、千との付き合いの方が長い。


でも特に千とわたしの仲がいいとか、そんなのはなくて、近くにいたというだけの存在。


そんでもって、出会った当初から大手企業の海堂グループ社長の息子でありながら光王子とも言われる美貌で人々を従わせていたやつのことが、時としてあまり好きではないと感じる。


別に嫌いではないけれど、キラキラしている千はどことなく近寄りがたい。



「でも、あれは千ではないよ」


「なんで言いきれるの?」



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