あと一欠片のピース
その視線が、わたしの手元に向いた。
その手には、セロハンテープで全て繋がっているパズルがあった。
わたしはパズルを持つ手を胸のところまで持ってきて、蒼馬くんを見た。
「これ、蒼馬くんの仕業でしょ?」
「さあね?」
「とぼけないで。絶対そうなんだから」
「なんでそう思う?」
「だって」
パズルに視線を落とすと、彼の目線がわたしと同じものを辿った。
「これ、蒼馬くんが好きな漫画から持ってきた言葉じゃん」
「……バレたか」
「バレバレ。蒼馬くんの好きなものは何でも覚えてんだから」
それは、某漫画の白いスーツとマントに身を包むイケメンすぎる怪盗さまの真似事らしき言葉。
くすくすと笑うわたしに、ふて腐れたような頬を膨らます蒼馬くん。
何それ、今まではずっと真顔だったくせに。
もう、可愛すぎ。
「今宵」
「うん、何?」
呼ばれて、彼を真正面から見つめる。
ふわり、彼の柔らかそうな髪が揺れる。
彼のバックにある青い空に、白い飛行機雲がかかっていて、それを見たときに耳元に『今宵、どうか幸せになって』と真尋の優しい声が届いたように感じた。
「〝今宵、貴女のハートを頂きに参ります〟」
「はい、どーぞ」
1年越しに通じ合った想い。
幸せを感じ目を細めて笑うと、頬に涙がこぼれ落ちた。