あと一欠片のピース



だったら、昨日あの後どうしていたのか、とか変に触れない方がいい。



そう思っていたのだけれど。




「今宵ちゃん、真尋のことなんだけど」


「え」


「ん?」


「あ、いや。何でもないです」


「そ?」


「はい」




まさか先輩の方からその話題を振ってくるとは驚きで思わず声がこぼれてしまった。


変なふうに思われたかな。


思われたよね、しまったあ。


失敗した、と眉根を寄せるわたしを見て先輩が小さく肩を震わせた。




「あーもう笑わないでくださいよう」


「ごめんごめん」


「で、ご用件は何なんですか!」




爽やかイケメンさんに笑われるという状態は、側から見ればどう映るのだろうか。


そんなの深く考えずともわかる。


恥ずかしくて居たたまれなくなり、わたしは先輩に話を促した。




「今日の放課後、暇?」




さっきまで震わせていた肩をピタリと止めた先輩がそう問うてきた。


何かを連想しているのか、慈しむような優しい微笑みで。




「あー、っと……」


「あ、何か予定あるんだ?」


「えっといや、そのー」





蒼馬くんと一緒に帰りたいな、とか思ってたんだけど。




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