あと一欠片のピース
名前を呼ぶが、彼がいない。
屋上に、彼がいない。
「なんで……」
上下する肩。
かすかすの声が空に飛んでいく。
虚しい、よりも、なんで。
なんで、の一言に尽きる。
朝の手紙は、蒼馬くんからじゃなかったの?
そんなはずはない。
蒼馬くんの字だったから。
じゃあ、なんで。
今、いちばん会いたいひとなのに。
いちばん、なのに。
「なんでだろね」
ふわり、パズルさんの香りがした。
気がつけば、背後から包みこむように抱きしめられていた。
「今宵、遅い」
「……蒼馬くんだって」
「飲み物買ってくるって手紙おいといただろ」
え? なんて言いながら手紙を広げてみる。
「読めないよ」
「だろうな」
一度、体を離して涙を拭かれる。
少しだけクリアになった視界はすぐにぼやける。
それでも、その数秒で優しく微笑む彼が見えたからか、洪水のようにまた水が湧き出る。
このままじゃわたし、水不足で大変なことになるよ。
「蒼馬くんに抱きつきたくて、走ってきたのに」
「ごめん。俺の勝ちで」
蒼馬くんが腕を広げる。