あと一欠片のピース
▽
「なにこれ?」
遅刻してきたのだから急ぐべきだろうが、下駄箱の戸を開けてそのまま、わたしは目を丸くした。
「どした、今宵(こよい)?」
「なんか手紙? がある」
「え! 呼び出し? 今宵なんかにモテ期到来とか生意気!」
「おい失礼だな」
隣で興奮している茜(あかね)を横目に、わたしは宛名もなにも書いていない真っ白な封筒の封を切った。
瞬間、柔らかな良い香りがした気がした。
「…なんじゃこりゃ」
「なに、なんだった?」
封筒の中から出てきたのは、想定外のものだった。
「パズルの1ピース」
「は?」
「いや、わたしがは?って言いたい」
「え、それだけ?」
「それだけ」
パズルのピースを片手に、もう片方で封筒の口をひっくり返す。
なにも出てこない。
「なにそれ、嫌がらせ?」
「さあ?」
「何にせよ告白じゃないとか、つまんないわー」
さっきの興奮ぶりが嘘のようにどうでも良さげな様子で、茜はポニーテールを結び直し始めた。
まあ、わからないでもない。
ちょっと告白かも、って期待しちゃったから。