あと一欠片のピース
この封筒を入れることでさえ勇気がいることだろうに。
それなのに1つ目の封筒を受け取ってもらえていないことがわかれば、辛いの一言で片付けられるものじゃないだろう。
わたしだったら、とても耐えられない。
だから、失礼なことをしてしまったと思ったのだ。
ひとの気持ちを考えられないほど人間やめてない。
「今宵、貴女の……なんだろ、続きが気になるなぁ」
「なーにぶつぶつ言ってんの?」
「なんかね、手紙が……あ、おはようございます」
「おはよ、今宵ちゃん」
わたしを覗き込んできた青木先輩は、爽やかな印象を与える短髪をわずかに揺らして、にっこりと人の良さそうな笑顔でわたしに笑いかけた。
そうか、先輩もわたしのことを「今宵」と呼んでいたんだった。
ちゃん付けではあるものの、「藤野」ではなく「今宵」と呼ぶことに間違いはない。
それに、たまに極々たまーに呼び捨てで呼ばれたりもする。
「手紙がどうかした?」
「あ、いえ、何でもないです」
でも、先輩はあり得ないだろう。
だって彼はこの学校のホープであり、そんなことにうつつを抜かす時間はないはずだからである。