あと一欠片のピース
青木先輩は、全国レベルの我が校の陸上部期待のホープである。
加えて、陸上部の部長ときている。
ゆえに、青木先輩はいつも忙しい。
「朝練は終わったんですか?」
「うん」
「お疲れ様です」
「ありがとう。あ、俺のこと呼んでるみたい。じゃあね、今宵ちゃん」
わたしの頭を軽くぽんぽんと触って、青木先輩は先を歩いて行った。
さすが、お忙しいだけある。
さてさて、早く教室に行ってパズルをくっつけてみなきゃ。
そう考えて少し歩みを早めると、背後から大声で名前を呼ばれてわたしは振り返った。
「今宵ーっ!」
「あ、茜」
「置いてかないでよ、ばかぁ!」
「ごめんごめん、楽しそうだったからさ」
「楽しいわけあるか!」
そう言う割に、楽しくなかったようには見えない。
トレードマークのポニーテールがぐちゃぐちゃになるくらい、今日も楽しく千と暴れたんだろう。
いずれケンカップルにでもなれば面白いのに。
きらきらしちゃってる千のことはそんなに得意ではないけれど、茜と一緒にいる時の千は素だから嫌いではない。
だから、付き合っちゃえばいいのに、って独りよがりで思ってたりする。