あと一欠片のピース
へえ、と思っていると、先輩がわたしの家の前にチャリを止めてわたしに近寄って来た。
「今宵ちゃんは、どうしたの?」
「どうしたの、って?」
「家の前に座り込んでるとか、何かあったんでしょ?」
「え、あ、いやーまあ……」
「話、俺で良かったら聞くよ」
「いえ、そんな悪いですから」
「いいからいいから」
ストンとわたしの横に座った先輩の笑みは、柔らかい。
だから、つい口が開いてしまった。
「すごくくだらないんですけど、それでもいいなら」
「いいよ」
「……他人が何を考えているのか、わかりません」
深刻な面持ちで話したからか、くだらなさすぎたからか、先輩は目を丸くして、それから吹き出した。
「ちょっと先輩…」
「ごめんごめん」
ぽんぽん、と触れられて頭を撫でられる。
「あのね、人のことわかる人なんていないよ。いたらむしろ凄いんだよ」
「?」
「人のことわからないのなんて、当たり前だよ。だから言葉に出すんじゃない?」
「……なるほど。じゃあ言葉に出してもはぐらかされたらどうしたらいいんですか?」
「それは、その人のなかにどうにかして入っていくしかないかなー?」