あと一欠片のピース
と言っても、私のために道を開けてくれる、ではなく私を引っ張る人のために道を開けているのだが。
てことは、もしかして私を引っ張ってる人は怖い人なのだろうか。
「あの、離してください!」
何か口にすればしめられるかな、やばいかな、と思いながらも、首が絞まり苦しくて仕方ないので声を張った。
「離さない」
背後から聞こえたのは、女の子なら誰しもドキッとしてしまいそうな言葉。
それにドキッとせずに首をかしげた私は、その声が聞いたことのある声のような気がしたからだ。
でもあの人がこんなことするなんて、考えられない。
んん? とぐるぐる考えていたら、暗い教室に少し優しげに投げ込まれた。
「いだっ……って言うほどでもないか」
思っていたよりも痛みが来なかったものの、よしよし、と軽く叩きつけられた腰を労わるように撫でるわたしを横目に、ピシャンと教室の扉が閉められた。
「昨日の悩みの種はあの子なのかな?」
「えっと、先輩なんで……?」
「ん? 今宵ちゃん困ってたみたいだから助けたんだよ」
「あ、…りがとうございます」
待って、待って待って。
確かに困ってはいたけれど助けてなんて頼んでない。