あと一欠片のピース



まあ、今回の場合はその好意はありがたかったんだけど。


でも普通に、いや普通にではなかったけれど、千と話していただけなのに。


それに、何だろう。


笑ってる先輩がどこか正気でないみたいでいつもの素敵な笑みだと感じられない。


何か切羽詰まってるというか、彼特有の爽やかさから滲み出る余裕が感じられない。



「……先輩、どうしたんですか?」


「別に。君を助けただけだよ。っていう名目のもと君を奪ったんだよ、今宵」


「え、どういう意味ですか…?」


「昨日君に会ってから考えたんだけど、相手の出方を見るより自分で動こうと思ってね」



ちょっと、よく意味がわからない。


とりあえず、教室に行かなきゃ。


茜が持ってきてくれていると思うけれど下手したらカバン置きっ放しだし。



「あ、嘘っ!」



手の中にあったはずの例の白い封筒を落としてしまっていることに気がついた。


やばい、ピースの続きが気になるし、探さなきゃ相手に悪い。


それから、あんな形とは言え、勝手に話に区切りをつけてしまったことを千に謝っておきたい。


普段だったらそんなこと気にしないんだけど、なんか変な風になったからちょっとわたしがどうなっていたのかも知りたいし。



「先輩、ありがとうございました。わたし今日、日直なのでまた」



日直なんて嘘だけど、とにかく今は一旦教室に行かなきゃ。



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