あと一欠片のピース




すごいなあ。


恋する女の子の、好きな男の子への想いって強いんだね。



「まず昨日の分から見てみようよ」


「うん」



茜の声に頷いて、わたしは昨日の分の封筒に手をかける。




「開けるよ?」


「おっけ、準備万端。いいよ」



何を思ったのか、茜がファイティングポーズを取る。


いやいや、封筒から怪物が出てくるわけじゃないんだから。


おまえの頭はどうなってんだよ。



「開けまーす」


「はいよ!」



封筒を開けると、ふわりと漂う柔らかい良い香り。


懐かしいその香りに、思わずふっと口元に笑みがこぼれた。



「なになに?」


「何が?」


「今、今宵笑ったじゃん」


「あーうん、なんか懐かしいなあって」


「変なの。1日空いただけだよ?」


「そうだね」



くすりと笑うけれど、だってこの手紙を手にするまで昨日は大変だったんだから。


言うて、宮崎に届けてもらったからすぐ手に入りはしたんだけど。


ほら、精神的にってことよ。


先輩に連行されるわ、封筒落とすわ、中谷さんに要らぬこと吹き込まれるわ、授業サボっちゃうわ、宮崎に説教されるわ、盛りだくさんな1日だったんだから。



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