あと一欠片のピース
えぐえぐと泣くわたしを茜に引っ張ってもらいながら、屋上の戸まで来た。
持っといて、と渡された封筒をポケットに突っ込む。
「相変わらずこの扉のノブ硬いなー」
「えと、開けるコツ、あるんだよね」
「そうそう。鍵なくても入れちゃうもんね」
ただし、コツを知るものは10人にも満たないくらい少ないから入れる人はごく僅かで本当に少ないけれど。
あ、いつかの昼間のカップルどもは過去にこの学校に通ってた先輩が勝手に作った屋上のスペアキーを、カップル同盟とかなんとか言う組で回しているらしい。
まあそんな情報どうだっていいんだよ。
屋上でイチャイチャするためにカップル同士で協力しあうってどういうことだよ。
なんかムカついてきた。
涙なんてどっかいっちゃったよ。
「今宵、今回は何をぶつぶつ言ってんのー?」
「リア充はシュワっとサイダーのように散れ!!」
「ふおー、今宵サマがご乱心じゃーい」
楽しそうに茜が笑って、よっと、と掛け声をかけて茜が屋上の戸をぐりんと回す。
「よしゃ、空いた。ほら今宵、行くよ。屋上にー、上陸ぅー!」
「上陸ぅー!」
屋上に飛び出すと、そこには見慣れた顔があった。
「お、今宵と茜じゃん」
そこにいたのは、大の字で寝っ転がる千だった。