あと一欠片のピース




思いがけない封筒の登場で、なぜか嫌悪感が一瞬にして消滅した。


おもむろに拾った封筒は、座ったせいでくしゃくしゃだった。



「くしゃくしゃにしてごめんなさい、パズルさん」



慣れた手つきで封を切ると、やはりあの柔らかな優しい香りがして、気持ちが落ち着いた。


1人でいるときに封筒を開けるのは初めてで、ちょっとだけ緊張したけれど。



〝頂きに〟



くしゃくしゃの封筒の中、無事だったパズルには、安定した斜め上がりの綺麗な字でそう書いてあった。


パズルの左と下の辺がまっすぐになっていて、上にひょこりと出る窪みがあった。


どうやら〝今宵〟の下にくるパズルらしい。


ということは、繋げるとこうなる。




〝今宵貴女の……頂きに参ります〟




貴女の、と頂きに、の間のところはまだ解明されていないところだ。


頂きに参ります、か。


そういう使い方の〝参ります〟なのか。


そう思うと同時に〝頂きに〟に対して嫌に肌寒くなった。



「……何もないよ」



パズルを封筒にしまい、わたしは空を仰いだ。



「パズルさん、ごめんね。わたしには何もあげられるものがないよ。だって」



空から、一筋の雫が溢れてきた。


とは言っても空には、まっさらな青が続いている。





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