あと一欠片のピース
「今宵」
千は先輩とは違い覚悟を決めているらしく、わたしを真正面から見てきた。
「今から話すことは、今宵にとって苦しい記憶を思い出すことになると思う」
「そんな気はしてたから覚悟できてる」
その目を逸らすまいと、千を睨みつけた。
風がひとつ吹いて、髪を揺らした。
「今宵らしいや」
千はふっと小さく笑って、次の瞬間にはきゅっと顔を引き締めた。
「真尋はね、今宵の親友だよ」
「……『親友』?」
「そう。今宵と真尋は気が合ったからよく遊んでた。まさに親友だったと思う」
そう言われれば、そんな存在がいたような気もする。
すごく大好きな人がいる幸せであの時は毎日が楽しくて仕方なかった、そんな記憶。
だけどそれはすぐにモヤがかかる。
「……その仲、一瞬で壊れたんでしょ」
なのに、1番の根底にある、わたしが忘れていたかった記憶は、不思議とするすると蘇ってくる。
きっとそれを壊したのは、きっと、
「わたしが真尋を壊したんだ」
きっと、いや、絶対に、わたしだ。
千は目を見開いて、少しの間固まった。
それを見計らったかのように、先輩が口を開いた。
「そう、…君が真尋を壊した」