あと一欠片のピース



誰にも言わないで、そう前置きをして、わたしは真尋の耳にこしょこしょと好きな人の名前を言った。


どんな反応をされるだろうとビクビクしていたら、真尋はくすくすと笑い始めた。



『そうだと思ってた!』


『え?』


『だって今宵ったら、彼と話す時すごく可愛いんだもん』


『ええ!? そんなことない!』


『あるの。普通にしてても可愛いのに好きな人の前ではもっと可愛いとか乙女だね。そんな乙女は応援したくなっちゃうよねー』



にこにこと笑う彼女は、わたしに耳打ちで『頑張ってね』と確かに囁いた。


大好きな真尋に応援してもらえる、それだけでわたしは心強く感じていた。


告白をするつもりはなかったけれど、自分から話しかけてみたり、頑張ってみようかなと思えるようになった。



それから少しして、真尋がわたしにあまり構ってくれなくなった。


真尋の元へ行っても『最近彼といい感じじゃない。彼のところに行ってきたら?』と、やんわりわたしを突き放す。


それは見方によっては、わたしを応援してくれている故の行動に見えるだろう。


だけどわたしは気がついていた。


真尋が目を合わせてくれなくなったことを。



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