あと一欠片のピース
ある日、わたしは真尋を屋上に呼び出した。
真尋と一緒にいられないことが辛くて、耐えられなかったからだ。
それから、茜からわたしと真尋の好きな人がかぶっていることを聞いたからだ。
『ねえ、真尋。わたしのこと嫌い?』
『そんなことあるわけないでしょ。今宵のことはずっと大好きだよ』
『じゃあなんで避けるの?』
『避けてなんかいないよ』
『嘘。あの人のこと好きなんでしょ。だったらそう言ってくれたらいいじゃん。恨みっこなしに一緒に頑張ればいいじゃん』
『……』
『わたし、真尋が彼と上手くいったとしても絶対に真尋を嫌わないよ』
彼女の手を握って彼女の目をまっすぐ見てそう言ったわたし。
そんなわたしからの視線を受けた真尋は、悲しげに瞳を揺らしていた。
『今宵、絶対なんてないんだよ』
『…え』
『真尋ね、今宵に嫌われたくない。だけど、彼のこと諦められない』
『……』
『だから、今宵とも彼とも一緒にいられない』
『そんなの嫌だよ! なんでよ!?』
『なんでも』
『じゃあ、』
ここでわたしが提案した案は、至極良きものだと思っていた。
『わたしが彼を諦めるから、わたしと友達でいて…!』
それが彼女を苦しめる案だということに気がつかずに。