あと一欠片のピース
謝ると、正気に戻ったのか目の前の真尋の肩が震え始めた。
『何が、ごめん? 好きな人がかぶったこと? 今、告白されそうになってたこと? 彼が真尋より今宵のことを好きなこと? 彼より真尋を優先させて今宵が辛かったこと? 今宵への申し訳なさに真尋が潰されそうになってること? 今宵の遠慮が真尋を苦しくさせてること? どれ? 何? 何がごめんなの?』
真尋の言うどれもが、ごめんだった。
きっとそれがわかっているだろう真尋は、早口で言った自分の言葉に傷ついているかのようで、目頭には透明の雫が溜まっている。
まばたきをすれば、きっと落ちてしまう。
良かれと思ってやった行動が、そんなにも真尋を苦しい想いにさせているとは、思っていなかった。
『あのね、真尋は嘘つきなの』
『……』
『みんなに好かれる真尋は嘘つきなの。本当はこんなにもドロドロでぐちゃぐちゃで、』
溢れた涙で濡れている真尋の顔を、ワイシャツの裾で拭って、彼女を抱きしめた。
『知ってた』
『え…』
『真尋がぐちゃぐちゃなの、知ってた。だけど、それでも真尋が大好きなのは変わらなくて、真尋を支えてあげたくて、だからわたし、誰よりも真尋と一緒にいたかったんだ』
ぎゅう、ときつく真尋を抱きしめる。
『わたし、真尋が大事なんだ』
暫くして、真尋が諦めたようにわたしの背中に手を回した。
『………今宵って、馬鹿だね』