あと一欠片のピース



ハグしたまま少しして真尋がわたしの背中をバシンと叩いた。



『あーあ、今宵はいい子すぎてむかつくなぁ。今宵には負けるなぁ。今なら、今宵と彼が上手くいっても祝福できそうなんて思っちゃうんだからなあ』


『……ごめん』


『うるさい、謝んのやめよ。あのね、真尋は次の恋を探すから。幸いまだ告ってないから振られてもないし、真尋に傷はついてないもん。だから気にしないでね』


『うん、ありがとう』



真尋のくるくるの髪の毛が頬にかかり、くすぐったくてわたしは小さく笑った。


真尋もそれにつられて笑い、わたしたちは体を離しお互いを見つめて笑い合った。



『……今宵、意地悪してごめんね』


『いいよ。あれで真尋の気が済んだのなら安いものだよ』


『おー? じゃあもっと意地悪しちゃおっかなー?』


『それは勘弁』



くすくすと笑い合うわたしたちを、茜と千と青木先輩が優しい眼差しで見ていて、最後はみんなで笑った。


それはどこか優しげで柔らかい雰囲気が漂い、とても心地よい空間だった。



『じゃあ今宵、戻ろっか』



真尋がフェンスに捕まって、わたしにもう片方の手を差し出した。


わたしはその手を握って頷いた。



『うん、戻ろう』


『真尋と今宵の関係も、前みたいに戻そ?』


『ほんと? また真尋と一緒にいられるの? 嬉しい…っ!』


『これからずっと、だよ。もう何があっても今宵と一緒にいる』





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