あと一欠片のピース
彼女の言葉に驚いたわたしはきっと、目をまんまるにしているのだろう。
口角を少し上げて微笑んだ彼女は、しっかりとわたしの耳に届くように言った。
『真尋もね、今宵のこと大事』
『え…?』
『えって何だよぅ。あのね、真尋気付いてたんだ。本当はね、彼に今宵を取られたくなくて意地悪したの。だからね、要は真尋にとっては、彼よりも今宵のことが大事だったってこと!』
『え、真尋…』
『も、もういいでしょ! 今宵に依存してたってことだってば! 恥ずかしいからもう止め!』
真尋の頬がじわじわと赤に染まっていく。
うわあ、可愛い。
純粋に、率直に、そう思った。
女子の依存は嫌なものだとよく聞くけれど、わたしは真尋からの依存がむしろ嬉しいと感じてついつい和んでしまった。
『彼と付き合うことになっても、真尋のこと放ったらかしにしないでね?』
小声でわたしをちらりと見て不貞腐れる彼女。
女なのに、どきりとしてしまった。
そういうところがモテるんだろうなあ、虜にするんだろうなあ。
『今宵、行こ』
真尋がフェンスにかけている手に力を込めたのがわかった。