あと一欠片のピース
このフェンスを越えたら、今まで通りのわたしたちに戻る。
ずっと仲良く一緒にいられる。
わたしたちの絆はきちんと結ばれていて、簡単に切れるような軽いものではなかったんだから。
いつまでも繋がっているのだから。
わたしの片手を取っていた真尋は今更ながら両手が空いていないとフェンスに登れないことに気づいたらしく、てへ、と可愛く笑いながらわたしの手を離した。
そして、先に登るね、とフェンスを登り始めた。
うん、と答えたわたしはフェンスを背中に、青空を見上げた。
まっさらな空には雲ひとつない。
綺麗な青が広がっていた。
この青を覚えておこう。
この青がわたしと真尋の絆を改めて確認した日の色。
いかにも女子らしく重たいと思われそうなことを思いながら目を瞑り、青を目の裏に焼き付けた。
風を感じる。
空がゆったりと流れるのを感じる。
とても心地よくて、自然と口角が上がった。
その時だった。
ビュッと強い風が吹いて、フェンスを、体を、揺らした。
え。
そう思った時には、もう遅かった。
体が確実にスローモーションのように傾き始める。
『今宵っ!!!』
次の瞬間には、真尋の甲高い声が聞こえて、体を引っ張られていた。
そして、それと引き換えにするようにして降りていく真尋の顔と丁度すれ違った。
『まひ…』
『今宵ありがとう』