運命なんてありえない(完結)
「日下さんて大学でよく写真撮ってましたよね?」
「はい……え?もしかしてC大ですか?」
橘さんの言葉通り大学の構内をよくカメラを持って歩き回っていた。
総合大学だったので、敷地も広く飽きなかった。特にスポーツ科学部のために設けられた競技ごとのグランドは経済学部だった私からしたらとても興味深かった。
「そうですよ。私と橘も経済学部で、1年の時のパソコンの講義でたまに助手でいらしてた日下さんに教えてもらったりしました」
えええええええーー
4年の時は講義が水曜日の1限と4限しかなくて、2限と3限は暇だろってよくゼミの先生に駆り出されていたけども……
「じゃあ杏さんのこと知ってたんですね〜」
「ええ、男連中は綺麗な先輩がいるって杏さんの担当するエリアの取り合いしてましたよ」
うーん確かに私の見回るエリアは男の子多いなとは思ったけど……
にしても美男美女……記憶にない
「記憶にないのも無理ないですよ〜」
思っていたことが口に出ていたのか、考え込んでいた私に佳香がニヤニヤとした表情で言ってきた
「大学4年って言ったら、杏さん元旦那さんとラブラブだった時期だから他の人なんて眼中なしじゃないですかぁ」
ぐはっ!そうでした……そんな時期でした
佳香とは飲みに行った時に恋愛遍歴なんかも話したな…よく覚えてるわね
「「元…旦那?」」
向かいに座る美男美女がまたもや口を揃える
佳香め…
恨めしく隣に目をやると「おかわりとってきまぁーす」とそそくさと席を立っていく
はぁ……心の中でため息を吐き、隠してることでもないので話すことにする
「大学卒業してすぐ結婚したけど、2年前に離婚したんです」
肩を竦めながら説明する
「じゃあ今はフリーですか!?」
離婚の言葉に河本さんが身を乗り出して質問を投げてきた
「ええまぁ…」
離婚してからずっと特定の人はいない
作る気もなかった……もうあんな惨めな思いはたくさんだ
毎日のように仕事であった出来事を話していた元旦那が急に仕事の話をしなくなり、連日深夜まで残業するようになり、休日出勤が増えたりして必然的に会話も減っていった
本人は気付かれてないつもりだろうけど、1ヶ月もそんなことが続けば薄々気付く……職場の子と不倫しているのだと…
いずれ自分の元に帰ってくると淡い期待をしながら半年待ったが、告げられたのは『離婚』だった
あれから2年経って、そんな惨めな話は会ったばかりの彼らにはできないが、離婚したということは笑って話せる