運命なんてありえない(完結)
社長室では椅子に座っているところと窓際に立って貰って1カット撮って終了した
「では、食堂で後輩を待たせていますので迎えに行ってからラグビー場へ向かいますね」
「ああ、また後ほど」
高梨様に挨拶をし、佳香が待つ食堂へ戻る
13時を過ぎた食堂は人も疎らである
「佳香お待たせ、行こっか」
ランチ後のコーヒーまで優雅に飲んでいた佳香に声をかける
モデルの2人は自身の部署に戻り、酒井くんはラグビー場へ移動したようで、先ほどの席にいたのは佳香だけだった
「あ、杏さんお疲れ様です!青山さん大丈夫でした?」
私に気付いた佳香は荷物をまとめ、食器を片付ける
片付けを終えた佳香と並びエレベーターの方へ歩き始める
「中学生かと思うような言動だったわ」
肩を竦めててみせる
「はははは…」
エレベーターホールに佳香の空笑いが響く
エレベーターは私が下りてきた時のまま止まっていたのですぐに乗ることができた
ラグビー場は本社から徒歩5分程
その間に歩きながら佳香に使うレンズの指示をする
外の撮影はレンズを変えるだけで全く違う画になるから面白い
学生時代に必死でバイトして貯金して買ったレンズ達…そろそろ新しいのも欲しいとは思うけど、この歳になると毎月のように友人の結婚式に呼ばれ会社員の安月給では思うように貯金ができない
レンズの説明が終わる頃、ラグビー場の入口へと到着した
「うわぁ大きい!」
入口からラグビー場を見上げた佳香が感嘆の声をあげる
私も初めて来た時はグランドよりも建物の大きさに驚いたのを思い出す
入口を開け中に入ると先日来た時と同じ場所に高梨様と秘書の吉野さんが座っていた
前回と違うのは選手の方々がいないということ
「高梨様お待たせ致しました」
「私達も今来たところだよ。あと30分くらいミーティングしてるだろうから、お茶でも飲んでミーティングが終わる頃にミーティングルームへ行こう」
促されるまま座ると吉野さんが二人分の飲み物を運んできた