運命なんてありえない(完結)
私の前に置かれたホットコーヒーとミルク、佳香の前に置かれたホットコーヒーとミルクと喫茶店とかで見かける紙の袋に入ったグラニュー糖4袋…甘党の佳香がコーヒーを飲む時に入れるいつもの数


「あれ?吉野さん佳香とお知り合いですか?」


コーヒーに入れる砂糖の数まで把握してるということはただの知り合いレベルではない

優秀な秘書だから1度会えば覚えてしまうかもしれないが…


「杏さん、彼氏の『こうちゃん』ですよ」


ええええええーーー


佳香の彼氏の『こうちゃん』は生まれた時から隣に住んでた2歳上の幼なじみで大学の頃にやっと想いが通じて付き合ってるとか聞いた記憶にあるが、まさか高梨様の秘書だったとは…苗字まで聞いてなかったしな



「なんでもっと早く言わないのよ」


頬をほんのりと染める佳香のほっぺたを人差し指でプニっとしてやる



「だって聞かれなかったですしぃ」



嬉しそうに砂糖を4本入れて混ぜる佳香

うんうん、そういう奴だよな



正面に座る高梨様からクスクスと笑いがこぼれる


「はっ!まさか高梨様もご存知だったんですか?」



「もちろんだよ。日下さんのことも今の店に来る前から吉野伝いに聞いていたよ『厳しいけど、超すごい先輩』ってね」


ジロリと佳香を見ると「あははは」と笑って誤魔化している



「人から『厳しい』と言われるのは簡単だが、『けど、超すごい』と言われるにはそれ以上の実力と努力と愛情が要る。吉野の恋人がそこまで言う君に大変興味が湧いて、異動してきたと情報をもらってすぐに指名したんだ。期待以上だったよ」


嬉しそうにコーヒーを口にする高梨様


「ありがとうございます」


嬉しい言葉をいただいた。自分がやってきたことが間違いでなかったと実感する




「日下さん、佳香がいつもお世話になります。これからも厳しく育ててやってください」


吉野さんが穏やかな笑顔で述べる



コーヒーを飲みながら佳香と吉野さんの馴れ初めを聞いたり、この撮影でどんな写真がほしいとか色々な話をした



「そろそろ行きましょうか」


そう声をかけテーブルの上を片付ける吉野さん
動きに無駄がなくさすがとしか言いようがない



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