運命なんてありえない(完結)
「キャプテン、クロ外にいましたよ」
そう言って腕に抱いていた小さな悪魔を飼い主に手渡す。
「サンキュー大也」
とキャプテンと呼ばれた人が受け取って、クロの体をグシャグシャと撫でている。
あの人、大也って名前なんだ…あーテレビで見たことあるな…ワールドカップがどうのってやってたっけ…ん?
なんで私の名前知ってるんだー???
はっ!今はそれどころではない!
写真だ!
「高梨様、遅くなってしまい申し訳ございません」
高梨様の元に寄り、頭を下げる。
高梨様にはいつもご贔屓にしてもらい、プライベートでも家族での食事に呼んでもらったりすることもあるが、親しき仲にも礼儀ありだ。
高梨様の周りに集まっている選手達からの視線を感じる…
「約束の時間ぴったりだ、さすがだね」
そう言ってニッコリと微笑む高梨様は46歳にして高梨グループを日本だけでなく世界的にも有名な大企業へと育てたかなりのやり手。
15歳の男の子と10歳の女の子の子どもがいて、毎年、結婚記念日や子どもの誕生日などイベントごとに写真館へ足を運んでくれる。
こうして視察も時間の許す限り行い一般の社員だけでなく、スポーツで所属している選手達からの信頼も厚い。
高梨様の言葉にホッとして笑顔を返し、高梨様に促され向かい側の空いているソファへ腰を下ろす。