運命なんてありえない(完結)


「何かいい事あったの?」


ご機嫌で戻ってきた俺に隣の席の先輩が再び声をかけてきた


「ありました内緒ですけど」


コーヒーを飲み仕事を再開する俺の横で「ふーん」と言いながら自身も仕事に戻る



杏さん率いる撮影隊が入ってくる


杏さんがいつもの風景が撮りたいのでいつも通りに業務をお願いしますと言ったので、俺も仕事を続ける…フリをする


杏さんが気になって仕事どころではない


「なぁ、どっち?お前の女」


どうしても気になるらしい隣の先輩がまたもや聞いてくる

必要以上に勘が鋭くて困る


「カメラ持ってる人です。5年前から俺の片想いですけど…」


まだ俺の女ではないので、訂正も入れる


「ほほぅお前が5年も片想いね…」


興味深そうに杏さんを観察する先輩はほっといて、午後の会議資料でもコピーしとくかと思い、コピー機のもとへ行くとあの女が寄ってきた



コピーを始めた俺の横に立ち「どういうつもり?」と聞いてくる


「何がですか?」


「あの女のことを名前で呼んで…私のことだって名前で呼んでくれないのに」


なんでこの人を名前で呼ばなきゃ行けないんだ


勘違いも甚だしい


「そのままの意味ですよ?あなたは名前で呼ぶに値しない」


いい加減ウザいので少しキツめに言う


「やだぁ大也ったらぁ」


いつも以上に甘ったるい声で俺の腕に自らの腕を絡めてくる


腕を振り払いたい衝動を抑えてコピーされた資料を纏めていると「青山さん」と杏さんの声が聞こえた



険しい顔で振り返り舌打ちをする女


そんなことだからいつまでも相手がいないのだ


もっとも、それに気付いていたらこんなに痛い女にはなっていないだろうが







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