運命なんてありえない(完結)

杏さんからこの後の行程を確認されようやく腕を離し自分の持ち場に戻る女


はぁとため息をひとつ吐き、纏め終わった資料を会議用と書かれたボックスに入れる

俺は練習で参加しないが、午後の会議の前に各々がここから持っていき会議に参加する





昼休みに入り、橘と昼飯を食べるため食堂に向かうべくオフィスを出るとあの女が階段からこちらに向かっていた


「大也」と呼ばれたが無視をして通り過ぎ、階段を一気に駆け下りる


食堂は上に1階上がるだけだが、直前行けば付いてくることが予想されたので1度下まで下りてまいてから行くことにする



1階からエレベーターに乗るためにロビーへ出ると、ちょうど来客の見送りをすませ戻ってきた吉野さんと出くわした


「吉野さん」

スマホの画面と睨めっこしていた吉野さんに声をかける


「やぁ酒井くん」


「あの女早くどうにかなりませんか」


「広報の青山さんね…佳香からも報告来てたし、そろそろ処分できると思うよ」


爽やかな笑顔に似つかわしくない言葉を耳にする


「佳香?」


さっき杏さんのアシスタントをしていた女性が「佳香」と呼ばれていた気がする



「今日、日下さんのアシスタントで付いてきてる人で僕の恋人なんだ」



何その繋がり…世の中狭すぎだろ


エレベーターが1階に止まり、一緒に乗り込む


「社長の通う写真館に日下さんが異動してきたって話をしたのは僕だから、君たちが上手くいったら真のキューピッドは僕だよね」


なんて黒い笑みを浮かべる


そんな腹黒キューピッドに一生頭が上がらなくなりそうだ



19階に付き、吉野さんとまた後ほどと別れる



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