運命なんてありえない(完結)
「はい、できた」
俺の言葉に足を動かしてみる杏さん
「すごい、明らかに大きいのにカポカポしない」
カポカポしないように締めましたから
「締め方にコツがあるんですよ。激しく動くのは無理ですけど、少し歩く程度なら大丈夫です」
カポカポしないと言っても大きいことに変わりはないので「歩く程度なら」と念押す
「ありがとう」
恥ずかしそうに俯きながら言われたお礼
破壊力抜群です
こっちが恥ずかしくなってきて「さ、行きましょ」と言って先に集合している男の群れに入っていく
1番仲のいい先輩から「イチャイチャしてんじゃねーよ」と冷やかされたので、「羨ましがらないでください」と返せば笑いも起こる
佳香さんの絶妙なアシスタントで集合写真はあっという間に終わった
1人ずつの写真で緊張でガチガチのキャプテンに自分が苦手な犬であるクロと写ることを提案する彼女のプロ根性に感心した
クロがキャプテンの腕の中を抜け出し杏さんに飛びかかるということも有り得るので、彼女の近くで動けるようにと近寄る
「佳香、これから犬がくるから私のこと守ってね」
自分で犬を連れてくるよう提案したがやっぱり怖いのか佳香さんにそんなことを言っていた
「え?嫌ですよ」とバッサリ切り捨てる佳香さんに心の中で爆笑すると佳香さんと目が合う
「その役目は酒井くんにお任せします」
ニヤリと笑って言う佳香さんに感謝
「もちろん喜んでお守りしますよ」
振り返った杏さんにとびきりのスマイルでお応えする
一瞬で赤く染まった顔に返事がなくても満足です
「佳香、三脚用意お願い」
誤魔化すように言ったその言葉に違和感を感じた
佳香さんも「三脚なんて珍しいですね」と言っている
大学の頃、いつも構内で写真を撮っている杏さんは三脚なんて使っていなかった
普通のレンズならまだしもラグビー場で望遠レンズを使っている時ですら