運命なんてありえない(完結)

「順番って年功序列なのかな?」


杏さんがカメラを覗く前にこちらを振り返った


「そうですね、こういうとこは体育会系なんで順番があるものはほぼ上からです。なので俺は1番最後です」

今年は新人は入れなかったので俺はもう1年、チーム最年少をやる


「お願いなんだけど、順番に来た方々がキメ顔とかしようものなら笑わせてもらえないかな?」


杏さんの言いたいことはわかる


こういう写真になるとカッコよく写ろうとキメてくるやつが数人はいる


「お易い御用です」


お笑い芸人には負けますが体育会系の得意分野です


撮影は順調に進み何人かは俺がとっておきのチームメイトの面白仕草モノマネで笑わせ


俺の番が回ってきた


「カッコよく撮ってね」と杏さんの耳元で囁き、佳香さんが指定する位置へ進む


「何て囁いたんですか?」と聞かれたが、さすがに他の人に言うのは恥ずかしいので「内緒です」と答える


前に誘導されるとせっかくなのでカメラ越しの杏さんに向かってとっておきの笑顔を贈る



シャッターを押した杏さんの顔は真っ赤に染まり画面を確認してしかめっ面をしている


それが何を表わすのかわからず、佳香さんと顔を見合わすと再びシャッターが押された


「「え?」」


佳香さんと2人でカメラを覗きにいく


佳香さんが三脚からカメラを外し、画像を再生し「きゃあー」黄色い奇声を発する


即座に杏さんがカメラを取り返し、俺は写真を確認することは叶わなかった


杏さんと佳香さんの先輩後輩のやり取りが微笑ましい










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